2023年9月に施行されたマンション管理適正化法などの改正により、管理委託契約書にも対応が求められるようになりました。法制度の趣旨と最新の契約書改訂を整理し、管理組合が契約時に意識すべきポイントをご説明します。
1. 2023年9月改正の概要
● 「マンション管理計画認定制度」の運用開始
地方公共団体が一定基準を満たす管理組合の計画を認定する制度が、2023年9月にスタートしました。認定を受けることで、住宅金融支援機構の「フラット35」やリフォーム融資の 金利優遇、税制の優遇措置などのメリットを享受できます 。
● 長期修繕計画ガイドラインの改定
長期修繕計画の策定期間が「30年以上」に延長され、見直しの頻度は具体的に「5年程度」と明示化されました。
大規模修繕の周期も「12~15年」と幅が設けられ、より計画的な資金確保が可能になります 。
● 標準管理委託契約書の改訂
(1) DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応
• 書面の電子化: 管理組合と管理会社間の書面(議事録、報告書など)の電子的なやり取りが可能であることが明確化されました。
• IT総会・理事会の明記: ITを活用したオンライン総会やWEB会議システムを用いた理事会の開催について、管理会社の業務範囲や費用負担に関する事項が明確に記載されました。これにより、遠方に住む区分所有者も総会に参加しやすくなるなど、組合運営の効率化が期待されます。
(2) 担い手確保・働き方改革に関する対応
• カスタマーハラスメント(カスハラ)対策: 管理員や清掃員といった現場の従業者に対する悪質な言動(カスハラ)への対応について、管理会社が講じる措置や、管理組合への協力依頼などが盛り込まれました。これにより、管理会社の従業員の労働環境を保護し、担い手の確保につなげる狙いがあります。
• 労働環境の改善: 管理員や清掃員の計画的な休暇取得や、勤務時間外の対応ルールが明確化されました。これにより、過剰なサービスを抑え、健全な労働環境を維持することを目指しています。
• 連絡窓口の一本化: 管理組合の代表者(理事長など)が、管理会社との連絡窓口を一本化することが定められました。これにより、個々の居住者からの過度な要求によって業務が煩雑になるのを防ぎ、円滑な業務遂行が期待されます。
(3)マンション管理を取り巻く事業環境の変化への対応
• 高齢化への対応: 居住者の高齢化が進む中、管理員等が認知症の兆候に気付いた場合など、管理事務の適正な遂行に影響を及ぼすおそれがある場合に、管理組合と管理会社間で協議し、適切な対応を検討することが記載されました。
• 感染症対策: 感染症のまん延など、マンション内の共同生活に影響を及ぼす事態が発生した場合の管理組合と管理会社の連携についても、対応が追記されました。
• 個人情報保護の充実: 組合員名簿や居住者名簿の整備・更新の仕組みが明確化され、個人情報の適切な管理について規定が充実されました。
• 管理計画認定制度への対応: 2023年9月に運用が始まったマンション管理計画認定制度の申請手続きについて、管理会社が管理組合に協力する業務範囲が明確にされました。
2. 契約時の注意点
(1)管理委託契約書の内容を徹底的に確認する
管理委託契約書は、管理組合と管理会社間の約束事を定めた最も重要な書類です。以下の項目について、細部まで確認しましょう。
• 業務の範囲と内容: 委託する管理業務が具体的にどこまで含まれているかを確認します。
o 日常清掃: 清掃場所、頻度(週何回、月何回など)、具体的な清掃内容(拭き掃除、掃き掃除など)が明確か。
o 設備点検: 建物・設備の点検箇所、点検項目、点検頻度が詳細に記載されているか。
o 会計業務: 管理費・修繕積立金の収納・保管方法、滞納者への督促業務の範囲が明確か。
o 緊急対応: 24時間365日の緊急対応体制の有無、対応内容、時間外対応の費用負担はどうなるか。
o その他: 消防訓練、防災訓練、掲示物の作成、総会・理事会の運営補助など、個々のマンションに必要な業務が網羅されているか。
• 委託費用と内訳: 委託費用が月額いくらなのかだけでなく、その内訳(人件費、事務費、清掃費、点検費など)が詳細に記載されているか確認します。
o 不明瞭な費用項目や一式費用となっていないか。
o 管理会社によって業務内容や費用が異なるため、複数の管理会社から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
• 責任の範囲と再委託:
o 管理会社の責任範囲が明確か。例えば、管理業務中の事故やトラブルが発生した場合、どこまで管理会社が責任を負うのか。
o 管理会社が業務の一部を再委託(例:清掃業者、設備点検業者など)する場合、再委託先は明確か、その責任はどこにあるか。
• 契約期間と解約条件:
o 一般的に契約期間は1年間ですが、自動更新の条件や更新時の手続きを確認します。
o 契約を解除する場合の通知期間(例:3ヶ月前)や、違約金の有無を事前に把握しておきます。
(2) 重要事項説明書を精査する
管理会社は、契約締結前に管理組合に対して「重要事項説明書」を交付し、管理業務主任者による説明が義務付けられています。契約書と合わせて、以下の点を重点的に確認します。
• 財産の分別管理: 管理組合の財産(管理費・修繕積立金など)を管理会社自身の財産と分けて管理する方法が適切に記載されているか。
• 管理業務の実施場所: 管理事務を行う事務所の所在地や、管理業務主任者の連絡先などが明確か。
• 長期修繕計画: 管理組合の長期修繕計画がどのようにサポートされるか。
• 更新時の変更点: 契約更新の場合、前年度からの変更点が重要事項説明書に記載されているため、その内容を必ず確認します。
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