国土交通省が公表した「令和6年度(2024年度)マンション管理業者への全国一斉立ち入り検査結果」を基に、法令遵守の状況、主な違反事例、および管理組合やオーナーが取るべき対策を解説します。
監事・監査の役割は、管理組合運営を健全に保つための重要な仕組みです。
理事会・総会との関係については、
「管理組合の総会・決議・理事会運営の基本」で整理しています。
1.検査結果
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(適正化法)」に基づき実施された検査の結果です。
項目 令和6年度結果 傾向
立入検査対象業者数 107社 前年度比で増加
是正指導を受けた業者数 22社 前年度比で減少(29社→22社)
是正指導の割合 約20.6% 減少(改善傾向)
検査対象業者数は増加しましたが、是正指導を受けた業者の割合は前年度より減少し、業界全体として法令遵守意識が一定程度向上していることがうかがえます。
しかし、約5社に1社が何らかの是正指導を受けている現状は、管理組合として注意が必要です。
2.特に多かった法令違反事項(是正指導事例)
是正指導の対象となった主な法令違反や不適切な業務運営の傾向を解説します。これらの違反は、管理組合の利益や財産保護に直結するものです。
(1)重要事項の説明等義務違反(適正化法第72条関係)
・管理受託契約を締結する前に、管理組合の管理者等に対し、重要事項を説明していない、または書面を交付していない。
・説明書の内容に、法定記載事項の不備(例:管理業務の内容・実施方法、管理に要する費用、契約期間など)がある。
➡ 管理組合が契約内容を十分に理解しないまま契約してしまうリスクがある。
(2)契約の成立時の書面の交付義務違反(適正化法第73条関係)
管理受託契約が成立した際に、遅滞なく法定の書面を交付していない。
➡ 契約内容の明確化や紛争予防の観点から問題となる。
(3)帳簿の作成等義務違反(適正化法第75条関係)
管理業務に関する帳簿に法定記載事項の記載がない(例:管理組合の名称、管理事務の内容など)。
帳簿を適切に保存していない。
(4)管理事務の報告義務違反(適正化法第77条関係)
管理組合の管理者等に対し、定期的に管理事務の処理状況を報告していない。
報告書の内容に法定記載事項の不備がある。
➡ 管理組合が管理会社の業務をチェックできない状態を生む。
3.マンション管理組合・オーナーがとるべき対策
管理会社による不適切な行為や法令違反からマンションの資産を守るために、管理組合は以下の点に特に注意し、チェックを強化すべきです。
(1)重要事項説明の厳格な確認
管理委託契約を更新または新規締結する際は、重要事項説明会を必ず開催させ、議事録を残すこと。
説明書に記載された管理業務の内容、特に費用(報酬)の根拠や契約期間について、曖昧な点がないか徹底的に質問すること。
財産分離管理の方法(修繕積立金、管理費の保管方法)が適正化法に則っているか確認すること。
(2)管理事務報告の徹底的なチェック
管理会社からの定期的な管理事務報告を理事会で必ず審議し、疑問点をその場で解消すること。
報告書に記載されている収支状況や管理費等の滞納状況、苦情処理の状況が、帳簿と一致しているか確認すること。
(3)契約書の書式と登録の確認
管理会社が使用している契約書式が、国土交通省の標準管理委託契約書に準拠しているか確認すること。
管理業者が国土交通大臣または都道府県知事の登録を受けているか(登録の有効期限も)確認すること。
(4)法令遵守体制の評価
管理会社を選定する際、単に価格だけでなく、法令遵守やコンプライアンス体制についてもヒアリングや評価項目に加えること。
過去に行政指導や処分を受けていないか(国土交通省のネガティブ情報等検索システムなどで)確認すること。
▼国土交通省 立入検査結果
▼参考資料
マンション管理適正化法
(重要事項の説明等)
第72条 マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約(新たに建設されたマンションの分譲に通常要すると見込まれる期間その他の管理組合を構成するマンションの区分所有者等が変動することが見込まれる期間として国土交通省令で定める期間中に契約期間が満了するものを除く。以下「管理受託契約」という。)を締結しようとするとき(次項に規定するときを除く。)は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等に対し、管理業務主任者をして、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるもの(以下「重要事項」という。)について説明をさせなければならない。この場合において、マンション管理業者は、当該説明会の日の1週間前までに、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等の全員に対し、重要事項並びに説明会の日時及び場所を記載した書面を交付しなければならない。
2 マンション管理業者は、従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理受託契約を更新しようとするときは、あらかじめ、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員に対し、重要事項を記載した書面を交付しなければならない。
3 前項の場合において当該管理組合に管理者等が置かれているときは、マンション管理業者は、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、重要事項について、これを記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
4 管理業務主任者は、第1項又は前項の説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。
5 マンション管理業者は、第1項から第3項までの規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。
6 マンション管理業者は、第1項から第3項までの規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等又は当該管理組合の管理者等の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって前項の規定による措置に準ずる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合においては、同項の規定は、適用しない。
(契約の成立時の書面の交付)
第73条 マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約を締結したときは、当該管理組合の管理者等(当該マンション管理業者が当該管理組合の管理者等である場合又は当該管理組合に管理者等が置かれていない場合にあっては、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員)に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 管理事務の対象となるマンションの部分
二 管理事務の内容及び実施方法(第76条の規定により管理する財産の管理の方法を含む。)
三 管理事務に要する費用並びにその支払の時期及び方法
四 管理事務の一部の再委託に関する定めがあるときは、その内容
五 契約期間に関する事項
六 契約の更新に関する定めがあるときは、その内容
七 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
八 その他国土交通省令で定める事項
2 マンション管理業者は、前項の規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。
3 マンション管理業者は、第1項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該管理組合の管理者等又は当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって前項の規定による措置に準ずる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合においては、同項の規定は、適用しない。
(帳簿の作成等)
第75条 マンション管理業者は、管理組合から委託を受けた管理事務について、国土交通省令で定めるところにより、帳簿を作成し、これを保存しなければならない。
(管理事務の報告)
第77条 マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれているときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない。
2 マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれていないときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等に対し、管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない。
3 管理業務主任者は、前二項の説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。
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