置き配細則を設定する際の注意点


なぜ「置き配」に細則が必要なのか

近年、宅配便の非対面受取(いわゆる「置き配」)が普及していますが、

マンションでは次のような問題が生じやすくなっています。

 共用部分への私物放置による通行・避難障害

 荷物の盗難・破損時の責任の所在不明

 景観・防災・衛生面の悪化

 置き配可否をめぐる居住者間トラブル

これらを放置すると、管理組合としての管理責任が問われかねません。

そのため、

区分所有法第6条(共同利益背反行為の禁止)および

同第32条(管理)の趣旨に基づき、

「禁止か自由か」ではなく「管理ルール」を定める細則が必要になります。


 今回の置き配細則は、基本となる管理組合運営を理解した上で検討すべきです。 まずは、「管理組合の総会・決議・理事会運営の基本(主軸)」をご確認下さい。




1.「共用部分」と「専有部分」の原則整理

基本原則

 共用部分に私物を置くことは原則禁止

 置き配は「一時的であっても私物放置」に該当する

特に問題となりやすい場所:

 エントランスホール

 廊下・階段・非常通路

 エレベーターホール

👉 細則では

「原則禁止+例外的に認める場合の条件」という構成が実務上安定します。



2.「全面禁止」にしない場合の考え方

置き配を一切禁止すると、現実的な不満が生じやすくなります。

認める場合の整理例

認める場所

 各住戸の玄関前(避難・通行に支障がない場合)

認める時間

 当日中のみ

認める物

 食品・生鮮品は不可

 大型荷物・長時間放置不可

👉 場所・時間・物の三点セットを明示することが重要です。



3.盗難・破損時の責任を明確にする

トラブルで最も多いのが「誰の責任か」という問題です。

必須の整理

 管理組合・管理会社は責任を負わない

 配送業者・利用者間の問題であること

 置き配は自己責任であること

この点を明記しないと、

管理組合がクレーム窓口になり続けてしまいます。



4.消防・防災との関係を必ず意識する

置き配細則は、防災ルールと不可分です。

注意点

 避難経路への物品放置は厳禁

 消防点検時の即時撤去対象とする

 管理組合による是正・撤去権限の明記

これは、建築基準・消防法制との整合だけでなく、万一の事故時に管理組合を守るためにも重要です。



5.管理組合の対応権限を明文化する

実効性を持たせるため、以下を細則に盛り込みます。

 注意・指導

 一時保管・撤去

 是正命令

併せて、

「撤去したことによる損害について責任を負わない」

という整理も必要です。



6.掲示・周知を前提にしたルール設計

置き配ルールは、知られていなければ守られません。

実務対応

 エントランス掲示

 管理組合HP掲載

 入居時説明資料への反映

細則と併せて「要約版(1枚)」を作ると効果的です。



7.他の細則との整合性チェック

 置き配細則は単独で完結しません。

  使用細則(共用部分の使用)

  防犯カメラ運用細則

  文書管理細則(苦情記録)

との整合を事前に確認しておくと、後々の修正を防げます。



8.置き配細則(ひな型) 

第1条(目的)

本細則は、〇〇マンション管理規約に基づき、宅配物等のいわゆる「置き配」に関する取扱いを定め、共用部分の適正な利用、防災・防犯および居住環境の維持を図ることを目的とする。


第2条(定義)

本細則において「置き配」とは、宅配事業者等が、受取人不在時に宅配物を管理組合または管理会社の立会いなく、建物内外の一定場所に留置する行為をいう。


第3条(基本原則)

1.共用部分への私物の放置は、原則として禁止する。

2.置き配は、前項の原則の例外として、本細則の定める範囲内でのみ認められるものとする。


第4条(置き配を認める場所)

置き配を認める場所は、次に掲げる場所に限る。

(1)各住戸の玄関前(避難・通行の支障とならない場合に限る)

(2)管理組合が指定するその他の場所

※エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール等の共用部分への置き配は認めない。


第5条(置き配を認める条件)

置き配は、次に掲げる条件をすべて満たす場合に限り認める。

1.当日中に受取人が回収すること

2.通行、避難、防災および美観を阻害しないこと

3.食品、生鮮品、腐敗・悪臭のおそれがある物品でないこと

4.管理組合が定める置き配ルールを遵守すること


第6条(責任の所在)

1.置き配された宅配物の盗難、破損、紛失等について、管理組合および管理会社は一切の責任を負わない。

2.置き配は、利用者および宅配事業者の自己責任において行われるものとする。


第7条(禁止事項)

次に掲げる行為は禁止する。

(1)共用部分への長時間の放置

(2)避難経路・消防設備周辺への留置

(3)管理組合の指示に反する置き配

(4)その他、共同生活の秩序を乱す行為


第8条(是正・撤去)

1.本細則に違反する置き配があった場合、管理組合は注意、是正指導または撤去を行うことができる。

2.前項の撤去により生じた損害について、管理組合は責任を負わない。


第9条(防犯カメラ映像の取扱い)

置き配に関連して防犯カメラ映像の閲覧または提供を求める場合は、管理組合が別に定める防犯カメラ運用細則に従うものとする。


第10条(細則の改廃)

本細則の改廃は、管理規約の定めに従い、総会の決議によって行う。


【補足】

本細則は、

区分所有法第6条(共同利益背反行為の禁止)

区分所有法第32条(管理)

の趣旨に基づき、共用部分の適正管理および居住者間の公平性確保を目的として定めるものである。



まとめ

・置き配は禁止か自由かの二択ではない

・管理組合が守るべきは「安全・防災・公平性」

・細則は、トラブルを未然に防ぐための「共通ルール」


 適切に設計された置き配細則は、居住者の利便性を確保しつつ、管理組合の責任リスクを大きく下げることができます。






《参考》

▲ 置き配ルール(掲示用)




サイト内リンク>

置き配細則



マンション管理支援21世紀研究会

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