近年、マンションの建物と居住者の「二つの老い」が深刻化する中、適切な管理や建替え・再生の円滑化が喫緊の課題となっています。
国土交通省および法務省より示された「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」に関して、主要なポイントをQ&A形式でわかりやすくまとめました。
管理規約改正を進めるにあたっては、
区分所有法や標準管理規約の位置づけを正しく理解することが重要です。
マンション管理規約の基本と最新改正については、
「優先順位別 管理規約改正項目一覧 ー何から改正に着手すべきか 法律・規約」
で体系的に整理しています。
1. 改正法の背景と必要性
Q1 改正法の背景にある、マンションをめぐる主な課題は何ですか?
A1 建物と居住者の「2つの老い」が進行していることです。これにより、外壁剥落等の危険性の解消、集会決議の困難化、組合役員の担い手不足といった課題が深刻化しています。
Q2 築40年以上のマンションはどのくらい増加していますか?
A2 現在(2024年末時点)のマンションストック約713.1万戸のうち、築40年以上のマンションは約137万戸(全体の約2割)です。この数は、今後10年で約2倍、20年で約3.4倍に急増すると推計されています。
Q3 修繕積立金の積立状況に課題はありますか?
A3 長期修繕計画を定めているマンションのうち、「現在の修繕積立金の残高が計画に対して不足していない」と回答したマンションは約40%にとどまっています。
Q4 改正法の公布・施行はいつですか?
A4 本改正法は令和7年5月30日に公布され、原則として令和8年4月1日に施行されます。ただし、管理計画認定の拡充に関する規定は、公布日から2年以内の施行が予定されています。
2. 区分所有法・被災区分所有法の主な改正内容(管理の円滑化等)
Q5 所在等不明区分所有者の専有部分の管理を円滑に行うための新しい制度は何ですか?
A5 「所在等不明区分所有者の専有部分の管理制度」が創設されます。これにより、必要な調査を尽くしても所在等が不明な区分所有者の専有部分について、裁判所が管理人を選任し、管理や処分(裁判所の許可を得て売却も可能)を行えるようになります。
Q6 管理不全の専有部分や共用部分への対応は可能になりますか?
A6 「管理不全専有部分管理制度」と「管理不全共用部分管理制度」が創設されます。適切な管理が行われず周囲に危険が及ぶおそれがある場合に、裁判所が管理人を選任し、管理・処分を行わせる仕組みです。
Q7 総会招集時のルールに変更はありますか?
A7 はい。招集通知において、全ての議案について「議案の要領」を示すことが義務付けられます。これが無い場合、決議は無効となる可能性があるため、注意が必要です。また、緊急に総会を招集する際の最短期間も「1週間」に変更されます。
3. 区分所有法・マンション再生法等の主な改正内容(再生の円滑化等)
Q8 老朽化マンションの建替え決議の多数決要件は緩和されましたか?
A8 はい。耐震性不足や外壁剥離等により周辺に危害を生ずるおそれがあるといった一定の客観的事由がある場合には、建替え決議の要件が5分の4から4分の3に緩和されます(所在等不明区分所有者を除く)。
Q9 新たに創設されたマンション再生手法にはどのようなものがありますか?
A9 区分所有法において、マンションを維持・再生するための新たな手法として、建物更新決議(一棟リノベーション)が創設されました。また、建物と敷地を一括売却する建物敷地売却決議などの決議も創設されています。
Q10 一棟リノベーションを行うための決議要件は何ですか?
A10 建物更新決議(一棟リノベーション)の多数決要件は、建替え決議と同等の5分の4の賛成が必要です。
4. マンション管理法等の改正内容
Q11 新築マンションの管理計画について、どのような仕組みが導入されますか?
A11 分譲事業者が、新築時から適切な管理が行われるよう管理計画を作成し、それを管理組合に引き継ぐ仕組み(分譲事業者と管理組合で共同変更)が導入されます(マンション管理法)。
Q12 役員の担い手不足に対応するための改正はありますか?
A12 はい。高齢化等による役員担い手不足への対応として「管理業者管理者方式」の活用を図るため、「標準管理者事務委託契約書」(新設)や「標準管理規約(書き換え表)」(新設)が整備される予定です。
Q13 地方公共団体による管理不全マンションへの対応は強化されますか?
A13 はい。外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対し、地方公共団体は報告徴収、助言・指導、勧告の権限が強化されます。また、区分所有法で創設された財産管理制度について、地方公共団体による申立てが可能となります。
5. 標準管理規約の改正概要
Q14 標準管理規約の改正で、総会の普通決議の定足数は変わりますか?
A14 はい。総会の基本定足数が、議決権総数の「半数以上」から過半数」に見直されます。
Q15 共用部分の変更に係る決議要件の緩和はありますか?
A15 はい。バリアフリー化など、一定の事由がある共用部分の変更に係る決議の多数決要件が4分の3から3分の2に緩和されます。
Q16 修繕積立金の使途の明確化は行われますか?
A16 はい。修繕積立金の使途として、新たな再生手法である更新・売却・除却の調査・設計段階の支出や、建物及び設備の性能・機能を向上させる「改良」工事についても充当できる旨が明確化されます。
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