よくある不安と誤解
区分所有法が改正されると、管理組合から次のような声がよく聞かれます。
「法改正に合わせて、管理規約をすぐ変えないと違法になるのでは?」
「規約改正が間に合っていない決議は無効になるのでは?」
「総会を開くまで何もできないのでは?」
結論から言うと、多くの場合、直ちに違法・無効になるわけではありません。
ただし、放置してよいわけでもありません。
本記事は【法制度×管理規約】に関する個別テーマの解説です。
制度や考え方の全体像は、
「マンション管理の法律と管理規約の基本と最新改正(主軸)」をご覧ください。
1.法改正と管理規約の関係(基本原則)
(1)法律は規約より優先される
区分所有法は強行規定と任意規定に分かれています。
強行規定
→ 規約で異なる定めをしていても、法律が優先
主な例:第31条 規約の設定、変更又は廃止
第39条 集会定足数
第17条 共用部分の変更
第62条 建替え決議
任意規定
→ 規約で別の定めがあれば、規約が優先
👉 規約改正が間に合ってい なくても、強行規定部分は自動的に法改正後の内容が適用されます。
2.規約変更が間に合わなかった場合の実務上の扱い
(1)すぐに「違法状態」になるわけではない
法改正があっても、
総会開催のタイミング
合意形成の難しさ
理事会の準備不足
などから、一定期間、旧規約のまま運用されることは現実的に想定されています。
👉 この「時間差」自体が問題になることは通常ありません。
(2)ただし「旧規約どおりの運用」は要注意
次のようなケースでは注意が必要です。
法改正で緩和・拡充された権限を無視し、旧規約のまま厳しく運用している
法改正で認められなくなった運用を、旧規約を理由に続けている
👉 トラブル時には「法が優先される」ため、規約を盾にした主張が通らない可能性があります。
3.規約未変更期間に行った決議は無効?
(1)原則:直ちに無効にはならない
規約が未変更であっても、
法改正に反しない内容
手続上の重大な瑕疵がない決議
であれば、当然に無効になるわけではありません。
(2)無効・取消しリスクが高まるケース
次の場合は注意が必要です。
法改正後に明確に違法となる内容の決議
法改正を前提とすれば決議要件を満たしていない決議
👉 後日、区分所有者から決議取消し・無効確認訴訟を起こされるリスクがあります。
4.標準管理規約との関係
多くの管理組合は、国土交通省が示す標準管理規約を参考に規約を作成しています。
標準管理規約は「モデル」であり法的拘束力はない
ただし、裁判・紛争時の判断基準として参照されやすい
👉 法改正後も標準管理規約に未対応のままだと、
「適切な対応を怠っていた」と評価される可能性があります。
5.管理組合が取るべき現実的な対応
(1)短期対応(すぐやるべきこと)
法改正の影響範囲を整理
規約と法の不一致箇所を洗い出す
理事会運営や決議時は法改正を意識した運用に切り替える
(2)中期対応(次回総会までに)
規約改正案の作成
改正理由を分かりやすく説明する資料の準備
区分所有者への事前周知
(3)長期対応(再発防止)
法改正時のチェック体制を整備
顧問専門家(マンション管理士・弁護士等)との連携
「標準管理規約改正=自動的に規約改正」ではないことを共有
6.まとめ
規約改正が間に合わなくても、直ちに違法・無効になるとは限らない
ただし、法改正を無視した運用はリスクが高い
重要なのは
「放置しない」「法を意識した運用に切り替える」「早期に規約改正する」こと
《参考》 規約未変更期間の対処法
総会議案書 記載例(規約未改正・法改正対応用)
本管理組合の管理規約は、現時点において改正後の区分所有法の内容を反映した改正が完了しておりませんが、区分所有法は管理規約に優先して適用されることから、本総会および本総会に基づく管理組合運営については、改正後の区分所有法の規定を踏まえて実施するものとします。
なお、管理規約の改正については、次回以降の総会において、必要な手続きを進める予定です。
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