マンションは「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」に基づいて運営されています。
管理規約や使用細則は各マンションごとに異なりますが、その土台となるのが区分所有法です。理事会や総会での意思決定、修繕、トラブル対応など、日常の管理業務の多くがこの法律に関係しています。
ここでは、管理組合の役員や区分所有者が最低限理解しておきたい重要条文をわかりやすく整理します。
今回の「マンション管理組合が理解すべき区分所有法の重要条文とは」は、基本となる管理組合運営を理解した上で検討すべきです。 まずは、「管理組合の総会・決議・理事会運営の基本(主軸)」をご確認下さい。
1.第3条 団体の成立(管理組合の根拠条文)
ポイント
区分所有者は、法律上当然に「団体」を構成することになります。これがいわゆる「管理組合」の法的根拠です。
実務上の意味
管理組合は任意団体ではなく、法律上当然に成立する
加入・脱退の自由はない
区分所有者は自動的に構成員になる
よくある誤解
「管理組合に入りたくない」は法律上通りません。
第3条(区分所有者の団体)
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
2.第6条 区分所有者の義務
ポイント
区分所有者は、共同生活の秩序を守る義務を負います。
実務上の意味
騒音、迷惑行為、無断改造などは法的に制限できる
管理規約や使用細則の遵守義務の裏付けとなる
活用場面
騒音トラブル
共用部分の私物放置
ペット問題 など
第6条 (区分所有者の権利義務等)
区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第1項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。
3.第17条 共用部分の変更
ポイント
共用部分の「変更」は特別決議が必要です。
決議要件
区分所有者数の4分の3以上
議決権の4分の3以上
例
エレベーター更新
外壁大規模修繕
エントランス改修
注意点
「変更」と「修繕」は異なります。
通常の修繕であれば普通決議で足りる場合もあります。
第17条 (共用部分の変更)
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
4.第18条 共用部分の管理
ポイント
日常的な維持管理は普通決議で行えます。
決議要件
過半数
例
清掃業者の契約
軽微な修繕
備品購入
実務上の重要性
管理組合の日常業務の多くがこの条文に基づきます。
第18条 (共用部分の管理)
共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第2項の規定は、第1項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。
5.第25条 管理者
ポイント
管理者とは、法律上の代表者です。
実務上の意味
理事長が管理者になるケースが一般的
契約行為や訴訟の主体になれる
管理会社とは別の存在
誤解されやすい点
管理会社 = 管理者 ではありません。
第25条 (選任及び解任)
区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。
6.第30条 規約
ポイント
管理規約の法的根拠条文です。
実務上の意味
管理規約は法律に反してはならない
標準管理規約はあくまで参考
マンション独自のルールを定められる
活用場面
駐車場ルール
ペット規定
民泊禁止 など
第30条 (規約事項)
建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第1項及び第2項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。
7.第34条~第39条 集会(総会)
ポイント
総会運営の基本ルールを定めています。
主な内容
招集方法
議決権
委任状・議決権行使書
特別決議要件
重要性
総会決議が無効になるかどうかは、この条文が判断基準になります。
第34条 (集会の招集)
集会は、管理者が招集する。
2 管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。
3 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
4 前項の規定による請求がされた場合において、2週間以内にその請求の日から4週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。
5 管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
第35条 (招集の通知)
集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第40条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の1人)にすれば足りる。
3 第1項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第1項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
5 第1項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第17条第1項、第31条第1項、第61条第5項、第62条第1項、第68条第1項又は第69条第7項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。
第36条 (招集手続の省略)
集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。
第37条 (決議事項の制限)
集会においては、第35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。
第38条 (議決権)
各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第14条に定める割合による。
第39条 (議事)
集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
2 議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。
3 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によつて議決権を行使することができる。
8.第57条~第60条 義務違反者への措置
ポイント
問題区分所有者への法的対応の根拠です。
可能な措置
使用禁止請求
競売請求
専有部分の引渡し請求
実務上の位置付け
最終手段として非常に強力な条文です。
第57条 (共同の利益に反する行為の停止等の請求)
区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前三項の規定は、占有者が第6条第3項において準用する同条第1項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。
第58条 (使用禁止の請求)
前条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第1項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
3 第1項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
4 前条第3項の規定は、第1項の訴えの提起に準用する。
第59条 (区分所有権の競売の請求)
第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第57条第3項の規定は前項の訴えの提起に、前条第2項及び第3項の規定は前項の決議に準用する。
3 第1項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。
第60条 (占有者に対する引渡し請求)
第57条第4項に規定する場合において、第6条第3項において準用する同条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。
2 第57条第3項の規定は前項の訴えの提起に、第58条第2項及び第3項の規定は前項の決議に準用する。
3 第1項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。
*管理組合にとっての理解ポイントまとめ
分野 重要条文 実務との関係
管理組合の成立 第3条 組合の法的根拠
迷惑行為対応 第6条 トラブル抑止
修繕・改修 第17・18条 工事決議の判断
代表権 第25条 契約・訴訟対応
ルール作り 第30条 規約整備
総会運営 第34~39条 決議の有効性
強制措置 第57~60条 最終的な対応手段
おわりに
区分所有法は「専門家だけの法律」ではありません。
管理組合役員や区分所有者が基本条文を理解しておくことで、
不要なトラブルを防ぐ
総会運営がスムーズになる
管理会社任せにならない主体的な運営ができる
といった大きなメリットがあります。
まずは「第3条・第17条・第18条・第30条」の4つを押さえることが、実務上の第一歩といえるでしょう。
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