マンションの老朽化が全国的な課題となる中、マンション長寿命化促進税制は、適切な管理と計画的な修繕を行うマンションを評価する新しい支援制度として創設されました。
もっとも、制度開始から日が浅く、実際に税制の適用を受けたマンションの件数は、現時点ではまだ多いとは言えないのが実情です。
その背景には、
管理計画認定や申請手続きの理解不足、制度自体の周知不足などがあり、
「制度があることは知っているが、使い方が分からない」「自分たちのマンションが対象になるのか判断できない」
といった声が管理組合から多く聞かれます。
しかし一方で、条件を満たせば区分所有者の固定資産税負担を直接軽減できる数少ない制度であり、
今後の大規模修繕や管理計画の見直しとあわせて活用を検討する意義は小さくありません。
本Q&Aでは、現在の活用状況を踏まえつつ、
マンション管理組合および区分所有者が制度を正しく理解し、活用の可否を判断できるよう、マンション長寿命化促進税制のポイントを分かりやすく整理します。
また、管理計画認定制度や長寿命化促進税制に関する制度全体の解説は、「管理計画認定制度(主軸ページ)」をご覧ください。
Q1 長寿命化促進税制とはどのような制度ですか?
A
老朽化マンションの適切な維持管理・修繕を促進するため、
一定の要件を満たしたマンションについて、区分所有者が負担する固定資産税を軽減する制度です。
特に、
管理計画の認定
長期修繕計画に基づく大規模修繕工事
といった「管理の適正化」と「計画的修繕」を行ったマンションが対象となります。
Q2 誰が税金の軽減を受けられるのですか?
A
税の軽減を受けるのは、マンション管理組合ではなく、各区分所有者(個人)です。
👉 管理組合が申請手続きを進めますが、
👉 実際に固定資産税が軽減されるのは「各住戸の所有者」です。
Q3 どの税金が軽減されるのですか?
A
軽減対象は、建物部分の固定資産税です。
土地の固定資産税:対象外
都市計画税:対象外
建物の固定資産税:対象
という点に注意が必要です。
Q4 どのようなマンションが対象になりますか?
A
主に次の要件を満たす必要があります。
主な要件(代表例)
築20年以上の分譲マンション
管理計画認定(または助言・指導)を受けている
長期修繕計画に基づき、一定の大規模修繕工事を実施
令和3年9月以降に修繕積立金の額を管理計画の認定基準未満から基準以上に引き上げている
過去に必要な修繕を怠っていないこと
※細かな要件は自治体ごとに若干異なります。
Q5 どのような工事が「対象工事」になりますか?
A
代表的には、次のような共用部分の大規模修繕工事が対象となります。
外壁補修・塗装工事
屋上防水工事
給排水管更新工事(共用部分)
バルコニー・廊下など共用部の改修
単なる応急修理や小規模補修のみでは、対象外となるケースが多い点に注意が必要です。
Q6 税金はどれくらい軽減されるのですか?
A
一般的には、固定資産税(建物部分)の1/2~1/6が、一定期間軽減されます。
軽減割合:1/2~1/6
軽減期間:原則1年度分
※自治体によって異なります。
Q7 自動的に軽減されるのですか?
A
自動ではありません。申請が必要です。
管理組合が必要書類をとりまとめ、区分所有者ごとに自治体へ申告
期限内に提出しなければ軽減されません
「工事をしただけ」「認定を受けただけ」では足りない点が重要です。
Q8 申請の流れはどのようになりますか?
A
一般的な流れは以下のとおりです。
管理計画認定の取得
↓
長期修繕計画に基づく大規模修繕工事の実施
管理組合が証明書類を準備
↓
区分所有者が固定資産税の減額申告
自治体による審査・決定
👉 管理組合と区分所有者の「連携」が不可欠です。
Q9 管理組合が特に注意すべきポイントは?
A
実務で特に多い注意点は次のとおりです。
総会決議内容と長期修繕計画が整合しているか
工事内容が対象要件を満たしているか
認定・工事・申請のタイミングのズレ
区分所有者への周知不足(申請漏れ)
👉 税制は「後から使おう」としても間に合わないケースが多いです。
Q10 この税制は管理組合運営にどんな意味がありますか?
A
単なる「節税制度」ではなく、
管理計画認定の取得
長期修繕計画の実効性向上
大規模修繕への合意形成の後押し
といった、マンションの管理水準を引き上げるための制度といえます。
まとめ
マンション長寿命化促進税制は、
「きちんと管理し、計画的に修繕するマンション」を評価する制度です。
管理組合としては、
👉 工事の前から制度を意識した準備
👉 区分所有者への丁寧な説明
が成功のカギになります。
*管理組合の状況別対応策
① これから大規模修繕を検討・準備する段階の場合
(設計コンサル選定前/修繕委員会立上げ段階)
今すぐやるべきこと
長期修繕計画が最新か(概ね30年以上・資金計画含む)を確認
管理計画認定制度への対応可否を専門家に確認
設計者・コンサルに
👉「長寿命化促進税制の対象要件を意識した工事内容にできるか」を依頼
👉 この段階なら、制度活用の可能性は最も高いといえます。
② 修繕設計が進行中・工事内容が固まりつつある場合
(見積取得中/仕様書作成段階)
まだ間に合う対応
工事内容が外壁・防水など「対象工事」に該当しているか確認
修繕周期・工事項目が長期修繕計画と整合しているか再確認
管理計画認定の申請準備に着手
👉 工事内容の微調整で対象要件を満たせることも多い段階です。
③ すでに総会で工事決議済みだが、着工前の場合
(契約直前・着工待ち)
注意しつつ確認すべきポイント
決議内容・議事録が長期修繕計画に基づく工事であることを明確にしているか
管理計画認定の取得が間に合うか
自治体の申請期限に間に合うスケジュールか
👉 条件がそろえば、この段階でも適用できるケースはあります。
④ 工事がすでに始まっている・完了間近の場合
(最も誤解が多いケース)
原則として注意が必要
認定や手続きが工事後になると 適用できないケースが多い
ただし、
工事内容・時期・認定状況によっては
👉 自治体の判断で対象となる例もゼロではない
👉 この段階でも「無理だ」と決めつけず、自治体や専門家への確認は必須です。
⑤ 管理組合として必ず押さえておきたい共通ポイント
どの段階でも、次の点は必須です。
管理計画認定の取得状況(または取得予定)
長期修繕計画と工事内容の整合性
総会決議内容・議事録の記載
区分所有者への周知(申請が必要であること)
👉 特に「区分所有者が個別に申請する」点は、
後から気づいても間に合わないことが多い要注意ポイントです。
⑥ 「今後のために」やっておくべき一歩
たとえ今回適用できなくても、
管理計画認定を取得しておく
長期修繕計画を制度対応型に見直す
次回大規模修繕で確実に使える体制を整える
ことで、
次の修繕時には“確実に活用できる管理組合”になります。
▼長寿命化減税パンフ 国土交通省
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